落書き島より

好きなだけ落書きだー!

香山滋『海鰻荘奇談』

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 さて、ようやく本の紹介するよ。自己紹介につらつら好きな作家載せてる割りに、更新遅すぎで申し訳ない!

 

 今回の『海鰻荘奇談』は、著者が「ゴジラ」の生みの親というのがウリ。昨今、シン・ゴジラとかアニメゴジラとかで、いろいろ話題になってますよね。で、生みの親のことは全然知らないなあということで手にとったのが、この本。

 読んでみると、昭和の空気感がすごい。いい意味で。

 

 例えば表題作では、水産学会の権威たる博士が住まう「海鰻荘」において、とある水棲動物を用いた殺人が起こる。被害者の身体からは、内臓や血液すべてが抜き取られていて、およそ人為的な方法によるものとは考えられない。明確な動機を持つ人間が一人いるけれども、果たしてその殺人方法とは…? というお話。

 「やートンデモミステリじゃんー」と思うかもしれないけど、著者は生物学・考古学に造詣が深く、これを駆使して、動物に関する空想科学小説を矢継ぎ早に発表してきたそうだ。本作もこの例に漏れず、緻密な描写で不可能を可能にできると思わせるような話運びが上手い。まさに、科学が発展途上だった昭和ならではのミステリだと思う。

 

 以下、気に入った作品の感想羅列。

 

 

「処女水」

 まず、処女水という単語を知らなかったので調べてみた。

 「地下のマグマに含まれていた水で、火山爆発や温泉活動などによって初めて地表付近に現れ、新たに水循環に加わったもの。(中略)1980年代以降、処女水という用語は使われないようになった。」(コトバンク

 1980年代かあ。うん、死語だね(バッサリ)

 作品の方は、処女水に関する研究をしている、ひどく容貌の醜い男Mにかけられた、殺人疑惑のお話。被害者はMの容貌の醜さを憎悪していて、そのために殺されたのだと噂されているが、死因が恐怖による心臓麻痺ということで、確証が得られない。

 読んでいくと「処女水→〇〇→醜い男」と、だんだん伏線が繋がるようになっていて、最後に真相が明らかになったときは、ちょっとしたカタルシスを得られる。M、可哀想だけどね。

 

「月ぞ悪魔」

 いやこれね、読む前から気になってた。タイトルかっこいいしさ。

 某見世物協会の総元帥から伝え聞いた悲恋話、という体裁で語られる本作は、視覚的な描写がふんだんに盛り込まれ、読者の想像力を駆り立たせてやまない。

 

 ――舞台はコンスタンティノープルの夜。見世物師としての生活に困窮していた、若き総元帥は、怪しげな老婆から施しを受ける。ふと窓の外を見ると、月がふたつ浮かんでいるのが見える。老婆は、施しの代わりに、次に月がふたつ浮かぶ夜まで一人の娘を預かってほしい、と言うが……。

 

 この情況からして、想像力がガンガン刺激されるよね! 他作とは一風変わって、幻想色の強い雰囲気を下敷きとしてまとめ上げた佳作。

 

「妖蝶記」

  もう、「この話をトリに持ってきてくれて、ありがとう編集者さん」としか言えない。

 モンスター娘ヒロインが好きだからストライクすぎだよ。蝶のイメージ通り、儚くもコケティッシュな女の子のお話が読めて、幸せです。

 モンスター娘好きを標榜するなら、ぜひ一読してほしい。